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病院組織と心理的安全性

UPDATE

2021.10.15

今、経営学、組織系の学会などでは、「心理的安全性の組織作り」が話題になっています。

組織やチーム内で不安を最小限に抑えることが組織のパフォーマンスを最大化すると言われており、「心理的安全性」のある組織づくりが求められています。この言葉は、組織行動学の研究者であるエイミー・C・エドモンドソン氏が1999年に提唱した心理学用語で、「チームにおいて、『他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰を科せられたりしない』状態」と定義しています。

 

エドモンドソン氏は、心理的安全性が低い組織で起きる不安として「無知だと思われる不安」、「無能だと思われる不安」、「邪魔をしていると思われる不安」、「ネガティブだと思われる不安」の4つの不安があると説明しています。

医療は、チーム医療と言われていますが、やはりヒエラルキーや、対人関係の問題で、このような4つの不安はどこにでも存在していそうです。

最近、病棟の業務改善をする際、スタッフヒアリングを行うのですが、よく聞かれる声として以下のようなエピソードがあります。

・医師の指示が変だと思っても意見を言うのは生意気と思われるかもしれない

・他の部署、職種に迷惑をかけるかもしれないので改善提案できない

・先輩に業務をお願いするのは生意気だと思われそうでできない

 

そのために、業務改善が出来ない、タスクシフトできない、時間外勤務が減らないなどの理由になっているのですが、まさに、心理的安全性が低い組織と言えそうです。

このような状況では、医療事故の発生、離職率の増加などが起きるのではないかと思われます。

 

ではどうすればいいのか・・・

この4つの不安を失くせばいいと言われていますが、実は、この4つの不安は、「自己防衛の思考」でもあります。この不安の背景には、「こう思われたくない自分」が存在しているのでしょう。

過去に、そう思われたくない思考が形成された経験があるので自己防衛的反応が起きると言われています。

例えば、医師に処方について質問をした際、看護師がそんなこと気にしなくていいと言われた経験があると、ネガディブな経験となり医師に聞いていけないと潜在意識下に入ってしまいます。その後、同様のことがあっても医師に聞かないので、結果、ミスにつながる可能性が大きくなります。

業務改善する場合でも、心理的安全性が低いと、改善策のアイデアがなかなか生まれないことが多いものです。業務改善のヒアリングで改善策を考える場合、その背景となった心理面も聞きつつ、「『心』にフォーカスするのではなく『行動』にフォーカス」した改善策を考えていくことを実施しています。

 

それはそうと、心理的安全性は、病院組織、会社組織だけではなく、家庭でも大事なのでしょうね。そう思と、ちょっと自分の家庭は・・・・と心配にもなります(笑)

田中智恵子