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UPDATE
2021.11.26
2021年も気づいたら終わろうとしている。私はコンサルタントになってから病院の経営改善をメインで行っていたのだが、今年は看護業務改善、クリニカルパスの作成支援など経営改善とは違ったプロジェクトに携わり、自分のなかでは新しい分野に挑戦した年であったように思う。
看護師業務改善/クリニカルパスといえば、先日クライアントの看護師長からある相談を受けた。今年度から婦人科と外科の混合病棟となったのだが、診療科別のパスにクオリティーの格差があり、現場が混乱しており、助けてほしいとのことである。
詳しく聞いてみると、婦人科は、一枚一枚のクリニカルパスを詳細も含めて事細かに作り込んでおり、パス一枚で治療開始から終了まで完結するように作成されている。一方で外科のクリニカルパスは治療内容・指示内容がざっくりとラフに書いてある。ブランク(空白)となっている部分も存在しており、都度看護師が医師に補足情報を聞きながら治療を進めるようになっている。(いわゆる昔ながらの指示パス)
混合病棟になったばかりの現場はこのパスを使った治療の進め方が各科で異なることにより、さらに混乱しているそうなのである。
例えば充実した婦人科パスに慣れている看護師が、外科患者に対してパス通りにケアを進めると、「なぜ自分に確認しなかったのか」と(外科の)医師に言われる。
逆に外科のパスに慣れた看護師が婦人科の患者のケアの際に、(婦人科の)医師に確認すると「そんなこと聞かないでくれ」と言われる。
自己判断できればよいのだろうが、業務が楽になるはずのクリニカルパスのせいで、余計な気を回さねばならず、本末転倒ではある。
この話を聞き、なんだか製造業の現場にも似たようなことがあるなと思った。(私の実家は祖父の代から続く町工場である)
町工場でAとB、2つのタイプのねじを大量生産したとする。Aのねじは、長さ、太さ、穴のサイズが、ほぼ均一。誤差があっても1/1000mmのレベル。一方、Bのねじは、長さ、太さ、穴のサイズが誤差とは言い難いほど大きくばらつく。結果、Bのねじが市場に出回ると、不具合が起き、クレームや事故が起きる。
タイプの差によらず、製品には、厳守すべきボトムラインとなる指標が存在する。そのラインを超えていないものは、欠陥品と判断し、発送を未然に防ぐ必要がある。防げなかった場合は問題が起きるということだろう。
今回は、外科と婦人科、タイプは違うが同じクリニカルパスという製品に対して、使用できるボトムラインを満たしているかを確認せずに市場(院内)に出荷(運用)したことが問題であると思う。
そのために、パス委員会での新規作成パスに対する審査や導入後の効果測定(アフターフォロー)が重要であるのだと再認識した。
パス委員会とはつまり各科で製造されたクリニカルパスという製品の品質管理を担っているといえるのだろう。(そもそもクリニカルパス自体が品質管理のための概念なのだが。)
『医療の品質を管理する製品』の『品質を管理する部門』。そう考えると、パス委員会とは、病院の医療の本丸であり、委員会ではなく、部門として力を注ぐべきであるように感じ、大きな可能性を秘めているように感じる。
井上 和樹