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UPDATE
2022.01.28
「今年」はまだ始まったばかりだが、「今年度」は残すところあと2か月ほどである。そして、来年度は診療報酬改定を控えている。
改定率に関しては、診療報酬本体における改定率は+0.43だが、薬価における改定率は-1.35であることが先月22日に厚労省より発表された。
改定率のニュースは多くの方がチェックしたと思われるが、その前日同じく厚労省から初めての実施となった医薬品の価格交渉実態調査の結果が公表されたことをご存じだろうか。
35社の医薬品卸業者を対象に行われたアンケート調査で、病院との価格交渉いわゆる川下取引の実態調査に関する調査である。
結果に関して、ここでは以下の3点について触れたい。
1・(200床以上病院)総価交渉(除外有り含む)をしている病院は55.3%を占めている。
2・単品単価交渉が進まない理由として最も多かった回答(複数選択)は「購入側が総価での交渉にしか応じないため」であった。
3・価格交渉代行業者が総価交渉に固執し、かつ取引状況の違いを無視した交渉となっている旨の回答が複数寄せられた。
総価交渉とは病院が購入している薬価収載医薬品における全体的な薬価値引率のみ交渉することである。「今年は〇%で妥結したい」とだけ伝えるといったもので、これは医薬品の価値を無視した交渉とされている。今回の調査で総価交渉が半数以上あることが明らかになったわけだ。
一方の単品単価交渉は個々の医薬品の価値を踏まえた交渉とされているが、現在単品単価交渉している病院が「医薬品の価値を踏まえた交渉」をしているのか、実態についてはやや疑問である。
医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が順守すべきガイドライン(以下「流通改善ガイドライン」とする)では単品単価交渉を行ったうえで、単品単価で妥結するよう改善が求められているため、医薬品卸は遵守のために単品単価での交渉を進めている。
しかしながら、今回の調査で明らかになった通り単品単価での交渉はなかなか浸透していない。上記2・3のような理由が挙げられているが、なぜ単品単価交渉に応じないのかまでは調査では言及されていない。
単品単価交渉と総価交渉による結果は同じ、もしくは単品単価交渉のほうが薬価値引率が改善するという保証でもあれば交渉の方法も変わっていくと思うが…。
今年また改定となった流通改善ガイドラインがどこまで影響を与えるのか個人的には楽しみである。
公表された調査の資料には他にも医薬品卸とメーカーの(不思議な)取引の仕組みのひとつである「一次売差マイナス」の解消に関する動きなども公表されているため、興味がある方は以下のURLよりご覧いただきたい。
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000869880.pdf
(参考資料:医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会2021年12月22日資料)
花井聖菜