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ヘルスケア業界を生きる

UPDATE

2022.04.15

これまで社会人の半分近くをこのメディカルクリエイトで過ごしてきたが、この度、人生のシフトチェンジをして、3つ大学の教員となる道を選択した。

私はもともと、保健師・看護師の資格を持ち病院で勤務していた。結婚後、専業主婦に飽きた頃、学び直しをするため、大学院に通った。多少の人生経験、医療者経験は、他の学卒の子には無いことなので、経験と知識で乗り切った大学生活だった。

しかし、修士論文を書く際、大きな落とし穴があった。保健経済学、健康増進科学分野で論文を書いていたのだが、指導教官の言う「なんか違うんだよね」の意味がよくわからなかった。つまり、ロジカルに書くこと、そして伝えることを、看護師では学んでこなかったのである。

その時、ロジカルに考えるツールとして”ピラミッドストラクチャー”という思考法を知った。そして、看護界、医療界にも必要だと思い、メディカルクリエイトに参画させてもらった。もう数十年も前のことであるが、自分の人生のターニングポイントとなっている。

 

そして今、1つの大学では、社会人でMBAを目指す人達と、ヘルスケアサービスについて議論をしている。学生には、税理士、製薬会社、看護師、医師、ヘルスケアに関係のない業種の方など様々な人達がいる。大学で学ぶ目的はそれぞれ異なりながらも、ヘルスケアサービスに興味を持っているコミュニティは、その多様さが実におもしろいのだ。

 

ヘルスケアサービスを考える場合、看護の基礎で最初に学ぶ「マズローの欲求5段階説」を基に考えることがよくある。

「マズローの欲求5段階説」とは、人の欲求はピラミッドのように構成されており、下層の欲求が満たされることで、上層階に進んでいくという考え方である。欲求は、下層から順番に「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」で構成されているというもの。

例えば、健康の維持増進には、生理的欲求の抑制を伴うものが多い。健診結果の悪化防止のためには好きなものだけ、食べたいだけ食べられない。腎機能が悪いので、果物を食べたいけれど食べられない。痩せたいし、そのための運動の必要性はわかるが、きついからやりたくないなど。その欲求の抑制を取る仕組みはサービスを生み出す1つの視点になる。

例えば、体重を気にしなくても食べられる低カロリー食や、砂糖不使用のチョコレートなどがあがるだろう。

このように生理的欲求を満たしたサービスは意外と多いものだ。

 

生理的欲求以外のニーズに着目したサービスももちろんある。以前は病気になっている人は生命保険に加入できない時代があった。現在は、病気になった人でも入れる保険がある。それは、病気になって初めて健康の大切さを実感した人の安全の欲求を満たすものではないだろうか。

ボディビルダーや、トライアスロンなどは、自己実現、尊厳欲求などを満たすイベントかもしれない。

 

つまり、ヘルスケアサービスを考える場合は、背後にある欲求をどう捉えるのかが重要なのではないか。

その背後にある欲求を捉えてサービスを構築するのは意外とワクワクするものである。

 

田中智恵子