by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
UPDATE
2022.08.01
今回は、主に急性期病院が中心に取り組むクリニカルパス、通常は胃全摘術、乳房切除術など疾患や治療法別にこれらを作成/運用していますが、ケアミックスや中小病院がこれらに取り組む場合には、疾患や治療法別に検討するのではなく、病態など異なる切り口で行うことが重要であるという話です。
クリニカルパスとは主には入院治療に対する計画書のように捉えることができます。例えば胃全摘術という胃がんに対する治療法に対して、入院日数を横軸に毎日何を目標にどんな医療行為を行っていくのかを明確にします。これは患者別に都度都度作成するものではなく、患者の多くは、概ね標準的な回復を遂げるものであることから予めマニュアルのように作成して(これをパスという)準備をしておきます。治療が開始される前に、患者をこのパスで運用するのか否かを判断し、もしGoであるなら、あとは医師からの細かい指示を仰がなくても問題がなければスムーズに治療が進行することになります。従って、入院患者をこのパス上で運用すればするほど標準化(バラつきの改善)という点で治療の質は向上し、スタッフの動きも効率化されるわけです。
さて、多くの病院がパスによる業務の効率化を考えています。その恩恵を十分に得るために重要なことは、パスで運用する患者のカバー率を上げることであることは言うまでもありません。パス活動を一生懸命やってもパスで運用できる患者が少なければ効率化の実感を得ることはできません。ここで大事なことはパスをどんな切り口で作成、運用すると、カバー率を上げることができるかという視点です。通常の急性期病院にとって、この重要な切り口は病名や治療法(手術、化学療法などなど)であるケースがほとんどです。各科別にみてみるとおそらく上位20%の疾患や治療法が患者の80%をカバーしている(よく言われる20-80のルール)ことがあるものです。しかも疾患や治療法は標準化しやすいというのもあるのだと思います。
では、ケアミックスや中小など、汎用的な急性期、地域包括ケア、回復期、療養など高齢者を中心に幅広く対応している病院はどうでしょうか?パスで運用するには不向き?どんな切り口でパスを作成すればいいか?実際にこのような病院で、よくある「胃全摘術」「人工骨頭置換術」など高度急性期病院が行っているようなパスを作成してもあまり多くの恩恵を得ることはできません。何故なら、患者が少ないからです。年間数例しかいない患者に対してパスを作成運用する効果が低いであろうことは容易に想像できます。ではパスは不向きなのでしょうか?そんなことはありません。パスの作成や運用の切り口を根本的に見直すことです。まず、大事なことはパスをきっちりした工程表と捉えるのではなく、医師などによる人的なバラつきを軽減し一定の質を高めるための標準化への取り組みやツールとして捉えることです。ま、この段階では、もはやパスとは言わないというのもあるかもしれませんが。例えば、全体が200床で100床が一般急性期で残り100床が療養型であるような病院で、療養型の患者の多くに使うことができるパス(標準化ツール)があればどうでしょうか?もしも療養病床における主治医が急性期病院での主治医を延長するなどで広く分散している場合には医師による対応も大きく異なるために、パスを作成運用することによる効率化の恩恵を多く受けることがことができるでしょう。「療養病床パス」みたいな概念です。また二次救急の病院は三次救急の病院とは異なり、高齢者の熱発、肺炎、めまいなどの患者が多く来られるのではないでしょうか?熱発パス、めまいパスなど疾患というよりも患者の「病態」という切り口でのパスがあると便利なのかもしれません。更にこれら中小病院には多くの専門医がいるわけではありません。自分の専門でない患者も病院総合医のように診ることが求められることも多々あるはずです。そのためにも専門外の患者を診れる医師にとってのマニュアルのような位置づけも実は大事なはずです。
中小病院、或いはケアミックス病院にとって重要なパスのコンセプト「Every Patinet by Every Doctor」であると思います。
遠山峰輝