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UPDATE
2022.09.12
蝉の声も少なくなり、今年の夏もようやく終わりが見えてきました。
蝉といえば、昨年(2021年)アメリカで大量に羽化した蝉の話をご存じでしょうか。
蝉は数年間地中で過ごし、羽化して1週間ほどで次の世代への命を繋ぎ、生涯を終えます。その地中で過ごす期間は蝉の種類によって異なり、アブラゼミで3~4年、クマゼミで4~5年といわれています。もっと長い期間を地中で過ごす蝉もいるのですが、2021年は17年周期で羽化する蝉の年だったのです。なぜ大量に発生したか。それは、数理生物学者である吉村仁教授(静岡大学)が発見した「素数ゼミの生存戦略」ですので、詳しくは吉村教授の著書でご確認ください。
キーワードはこの「素数ゼミ」という名前です。実際には13年周期、17年周期で羽化する蝉を総称して「素数ゼミ」と呼んでいます。
「素数」とは、1とその数自身でしか割り切れない正の整数です。英語にするとPrime Number です。100までの間の素数は「2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47、53、59、61、67、71、73、79、83、89、97」となり、全部で25個あります。この素数は「prime numbers are the elite of their kind. 素数は数字界のエリート」と表現されるほど、特殊で美しく強い存在なのです。
美しさの一つは「すべての数字は素数によって作られている」という事です。ここでいう数字は自然数のことを指しますが、「存在」している「ものを数える」、1 から始まる正の数はすべて素数の積に分解されるのです。これを「素因数分解」といいます。
例えば、10は「2×5」、135は「3×3×3×5」という感じです。すべての数字がこのように分解できるのは美しいですね。さらに、この分解の方法ですが、方程式が作れない、という特徴もあります。もちろん「考え方」はありますが、一つの方程式で計算できるわけではないのです。方程式ができれば「解きやすく」なりますが、地道な作業での100桁、200桁の数字の素因数分解を行うのは人間にはほぼ不可能で、スーパーコンピュータの領域になります。その素因数分解の困難性を応用したのが「RSA暗号」という公開鍵暗号のアルゴリズムです。解読困難な暗号、本当に強いですよね。
ロジカルシンキングの基本の「因数分解」も、この素因数分解と同じで、もうこれ以上分解できない要素にまで分解し、カテゴリー分けを行い、漏れとダブりがない状態に整理をしていきます。なんとなく複合的な要素が含まれているな、と感じる時は、まだ最小単位(素数)にたどり着いていない時です。これも、方程式はありませんが「考え方」はあります。
いま「存在」している課題を整理したい、問題を解決したいときは、まずはロジカルに要素に分解して考えていきましょう。見えていなかった課題も見つかるかもしれません。
石井富美