社長ブログ

by 遠山 峰輝

BLOG遠山峰輝のつづる日常

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    2023.05.14

  • タスク・リストラチャリング

    私の好きな作家真山仁の「ハゲタカ」という小説の中で、主人公である鷲津(投資家)が発する言葉にこんなものがある。「日本はこの20年間何も変わっていない。日本を変えるには『Scrap&build!』(スクラップ&ビルド)、『壊して作り直せ!』が必要と言いたいが、そうではない。『Scrap&bird!』だ。日本は壊して作り直しても全く意味がない。何故ならば、日本は、そうやって新しく作り直しても、結局また既得権者に都合のいい体制が作られるだけだからだ」。『Scrap&bird!』、『壊して羽ばたけ』だ。」。Build→Bird(羽ばたく)、まあ、ちょっとこじつけ的な面はさておき、「本質を捉える言葉」は大事である。頭に残るし、ある種の行動指針になることもある。

     

    ここ数年、医師の働き方改革ブームなどもあり、「タスクシフト」「タスクシェアリング」という言葉が病院内ではよく聞かれるようになった。医師である必要のない業務は他へ、看護師である必要のない業務は他へということである。そもそもこの言葉、最初から違和感があった。「では、そうやって他人に押し付け、最後にその業務はどこにいくのか・・・。」あまり皆、口に出しては言わないが、なんとなく、病院の中では医師→看護師→コメディカル→事務という序列で、タスクシフトの順番は決まっており、最終的な業務の行き場は事務となる。人件費の安い事務で、人が足りなければ雇えはいいというような雰囲気がある。

     

    先日ある病院の議論に参加したときのことである。「各診療科(外科、整形、循環器など)を強化したいが、中小病院でもあり、各科医師数は1名~2名程度で少ない。これでは各診療科を強化することは難しい。どうしたものか」「いや各診療科は本当にその科でなくてはならない専門的なことばかり行っているわけではないだろう。専門的でない診療は総合診療や一般内科にシフトすることができれば、少ない診療科の医師数で生産性を高めることができるのはないか」「一方で総合診療と言っても、ここも『なんちゃって総合診療』であり医師が充実しているわけではない。どうすればいいのか」「では看護師がもっと診療を支援する体制を作ることはできないか。そのために看護師の業務を更に効率化できないか。そもそもシフトではなく、無駄な業務は止める、DX化を進めるなども検討すべきではないか」・・・・まともな議論であると思う。

     

    もちろん「タスク・シフト」を進めている病院は、何も序列に沿った業務の横流しばかりを検討しているわけではないことは十分承知している。しかし、言葉は大事である。医師の働き方改革や人材不足解消などの本質は、業務を序列や給料レベルに応じてシフトすることでがなく、まずは、必要な業務、そうでない業務を見極め、ITなどの活用による効率化の可能性も検討、そして人材を総合的に俯瞰、適材適所を行うことであると思う。もはや、職種間で業務を調整する時代ではない。そこにはAIも介在する時代である。「タスク・リストラクチャリング」という発想や言葉を推奨したい。

    遠山峰輝

     

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