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マイナ保険証

UPDATE

2024.07.12

2024年12月2日から現行の健康保険証は新規発行されなくなります。これはデジタル庁が進めているマイナンバーカードの普及策の一つとして2022年10月に決定されています。いよいよ半年後に迫り、マイナ保険証への移行促進に力が入っています。

医療機関と薬局には、2024年5月から7月の3か月間のマイナ保険証利用促進活動に対し、マイナ保険証の利用者を一定以上増やした場合に一時金を支給するいわばキャンペーンを展開しています。さらに、6月20日にはこの一時金を倍増させる方針を発表し、一時金の最大額は20万円から40万円になりました。厚生労働省としては、この利用促進の取り組みに217億円を計上していて、健康保険証の廃止を前にマイナ保険証の普及を進めようとしています。一方、実際にマイナ保険証を利用する方々向けには、マイナ保険証利用促進のポスターを用意し全医療機関に院内掲示を求め、6月後半からはテレビCM、SNS系動画などで、マイナ保険証利用促進動画を流し始めました。

打てる手はすべて打って、何としても12月までにマイナ保険証に移行してもらおうというラストスパートに見えますが、そもそもマイナンバーカードが普及しきっていない「問題」の要因へのアプローチが足りていないのではないかな、と感じています。

 

銀行口座のキャッシュカード、複数のクレジットカードを持ち歩きながら、マイナンバーカードを持ち歩くことに不安を感じる「要因」は何か、キャッシュカードやスマホのロック解除の暗証番号を覚えているのに、マイナンバーカードの4ケタの暗証番号を覚えられないと言う「要因」は何か。

マイナンバーカードの普及は今後のDX戦略のための必須要件ですから、何としても全国民に利用させる必要があります。この取り組みをイノベーター理論で見てみると、初期市場とメインストリーム市場の間のキャズムが発生しているように見えます。

 

初期市場の消費者(イノベーター、アーリーアダプター)は「新しさ」に価値を感じ、製品やサービスを購入する傾向にありますが、メインストリーム市場のユーザー(アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ)はそうとは限りません。誰かがお墨付きを与えている、商品のクオリティが安定している、費用対効果が高い、周囲の人々が使っているなど、安心して購入できる理由が必要になります。どんなに利便性、必要性を伝えてもこの「安心感」を実感できないと、アーリーマジョリティは動き出さないと考えられています。

 

安心感という極めて主観的な感情を持つには、

1. 安全性: 環境や状況が危険でないこと

2. 信頼: 他者やシステムに対する信頼感を持てること

3. 予測可能性: 未来の出来事や結果が予測可能であること

4. サポート: 周囲からの支援やサポートがあること

5. 経験: 過去の成功体験や慣れ親しんだ環境になること

6. 情報: 十分な情報が提供され、理解されていること

という要素が必要と言われています。

 

マイナンバーカードに対する不安要素を考えると、上記6項目一つひとつへの丁寧な説明が必要なのではないかと感じます。

とはいえ、この半年ほどの間に、マイナ保険証で資格確認をする患者さんは明らかに増えてきています。そしてアーリーアダプターたちは、スマホアプリの配布を心待ちにしているという次のステージに向かっています。

 

石井富美