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業務改善で陥りがちな罠                                  誤薬をどうやって防ぐ?某病院で取り組んだ問題解決研修のケース

UPDATE

2018.06.28

 QC活動、業務改善など病院の中では多職種で組織横断的に取り組むところも増えてきました。ロジカルシンキングを用いた業務改善の研修と改善支援しているのですが、どこの病院でも課題になるテーマに誤薬があります。誤薬には、薬の種類、量、時間、投与方法の間違いなどがありますが、それぞれの施設では、このようなインシデントが発生するとインシデントレポートに記載し、共有し発生しないように対策を取っているとお聞きします。
その分析法としては、投薬までのプロセスを分解し、どこで問題が起きたか、なぜ起きたか特定して解決策を考える方法があります。これは、火事が発生した際、火元はどこで、何が原因だったのかを特定することと同じ思考ですね。このようにwhere? why?の分析はよく使われます。
しかし、解決策となると、マニュアルを作ろう、ダブルチェックをしようと、現在の業務+αとたし算が多く見られています。この「足し算式解決策」は業務を増やすことになり、解決策として実行する際は十分な検討が必要になります。

そこで、異なる発想として、引き算式解決策の事例をご紹介します。ある大学病院の内分泌系病棟の事例です。そもそも内服薬の誤薬は何故おきるのかを考えたところ、医師が処方し、看護師が配薬するからと発想の転換をしてみました。そこで配薬について現状分析をしたところ、配薬率(患者に看護師が薬を手渡す患者数/入院患者数)が、退院3日前までは100%だったのです。退院3日前になってやっと、患者の自己管理(看護師が配薬をしない)に変えていく方法になっていたのです。まあ、そうなった理由も、過去のインシデントの解決策から紆余曲折ありその現状に至ったのですが・・・。
この現状から、
・看護師は、単に配薬をするマシーンになっている
・プレドニンなど量の管理が必要な患者はいるが、患者の中には自分で管理できる人もいる
・患者側の視点からみても、突然、3日前にこれからは自分で管理してねといわれても・・・
等々の意見があがりました。
結論としては、内分泌病棟の特性を鑑み、自己管理へ進めるステップとその判断基準を医師、薬剤師、看護師で考え実践していくことになりました。できるだけ、患者の薬の自己管理をすすめ、それができるようにするケアを実践していくというものです。

解決策実施後、看護師からは
・薬剤師も入院時薬剤についてのヒアリングをしていると初めて知った。
・配薬の際、薬の内容と患者状態を見るようになった
・記録もポイントを絞って記載できるようになった
などの声が聞かれました。

業務改善時、業務の足し算ではなく引き算も考えること、「業務をこなす業務マシーンからの脱却」これは、現場改善を支援する際重要で、私たちが大切にしていることです。
田中智恵子