by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
UPDATE
2018.10.28
星野リゾートの大きな成長の一つの要因に「マルチタスク化」という概念がある。日本語に訳せば多能工化である。もともとは工場の生産性ラインで取り入れられた概念であると思う。旅館やホテルは、通常、フロント、調理、飲食サービス、清掃などそれぞれが専門特化しており、通常他の業務は行わない。教育も専門性を重視したものが行われる。これは国内だけではなく、海外も似たようなものだという。ところが、これには非効率が生じがちである。それぞれの業務にピークの時間が存在し、それ以外の時間は暇になるものだからだ。ここに星野リゾートはメスを入れた。一人が基本的に全ての業務をできるようになるという経営方針を掲げた。自分の担当の仕事が一息ついたら、他の人の業務を手伝うというわけである。そういえば最近、ちょっと経営的に厳しいのかなと思うホテルなどへいくとフロント係の人が夕食時にはウエイターをしているなどを見かけることが多くなったと思う。専門分化はそのバランスをとるのが難しく、特に客数が減っている中ではコストアップとなる。
さて、こんな目で病院を見てみると、この手の非効率が山積みとなっているのではないかと思う。「この業務は医師でなくてもできる業務ではないか」「この業務は看護師である必要はない」「この業務は薬剤師の専門性が活かされない」・・・・延々と続き、結局、事務職にしわ寄せが来るのか?事務職もプライドを持って、「これは事務職でなくてもできる業務だ」くらいのものが欲しい。ちょっと横道にそれたが、病院ほど専門性という名の縦割りでマルチタスクという概念とほど遠い世界はないのかもしれない。ホテルや旅館と違い、国家資格であるということもあるのかもしれないが、経営的に厳しい病院はこのようなことを言っている場合ではない。医師も看護師も薬剤師も、自分の専門性は持ちつつも、マルチタスク化が求められているのではないだろうか。もちろん法的に行っていいこと、そうでないことがあるのは事実である。しかし、互いの職種の垣根を超えて、助けることができる業務は少なからずあるに違いない。
遠山峰輝