by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
UPDATE
2019.03.24
需要と供給に合わせてタイムリーに価格をコントロールする、ダイナミックプライシングがトレンドとなっている。わかりやすい例でいれば、航空運賃やホテルの値段。需要が高まる連休などは通常の2-3倍になることもよくある。今でいえば、花見シーズンで京都のホテルの値段は大きくアップすしている。ここまでは一昔前には珍しいことではなかったが、アマゾンなどインターネット通販では、データをタイムリーに解析、人気商品などあれば、それをいち早く察知して価格を変え、収益を最大化するということが行われる。最近では、アルバイトの時給もその時の需給関係で変動させる会社があるらしい。いろいろなパターンがあっても、要は需給関係をもとにしたプライシングであることに変わりはない。
さて、そんな中で医療の値段を考えてみる。医療の値段は診療報酬で決まっており、ダイナミックプライシングとは対極にある世界であろう。そんな中、自由診療の場合には実は普通に行われている。健診ドック。健診が閑散期となる秋や冬は値引きをするケースはよく見かける。しかしこれは自由診療という世界であり、医療の本丸である保険診療においては抵抗があるだろう。「物の値段と命の値段は別だ」という声が聞こえそうである。しかし、保険診療においても、実はこの手のことは行われている。大病院への患者の集中を回避するために、大学病院の受診の値段が高いのは典型である。
大事なことはダイナミックプライシングにより、顧客、或いは患者の平準化が促進するということではないか。これは医療全体からしてみれば効率化が推進することになる。例えば、どの病院でも外来患者は午前に集中する。結果、午前のピークタイムに合わせて人員が配置され、午後には暇を持て余すということが起きる(もちろん、ここをしっかり管理、調整している医療機関も多くあるであろうが)。しかし、何故、患者が午前に集中するのか?午前に病気になりやすいから?のわけはないだろう。仕事関係?ま、午前も午後も一緒だろう。もっとも高齢で時間のある高齢の受診者が多いのなら、午前も午後も関係ないだろう。そう、病院の外来が午前を中心に運営しているからということが最も大事な理由かもしれない。いずれにせよ、午前に外来が集中する顧客サイドの理由は薄そうであり、午前の需要を午後に移動させ平準化することができれば、効率化が促進する可能性がある。外来の値段は午前が高く、午後は安い、救急車も逼迫しているときはお金がかかる(したがって簡単なことでは救急車を利用しない)。ちょっと極端かもしれないが、医療にいかにしてダイナミックプライシングを持ちこむかは興味あるテーマではないだろうか。
遠山峰輝