by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
by 遠山 峰輝
UPDATE
2020.01.14
週間東洋経済の1月11日号に「病院が壊れる」という特集があった。人口減、患者減少が進む中、病院が分散していては非効率、統合が必要ということを各種データを示したながらの記事であり、とてもわかりやすいものであった。国が進める「地域医療構想」は病院がその経営母体の垣根を超え、機能の集約や役割分担を進めることを推奨している。患者が減少していく中、小さな地域単位での病院では成立することがもはや難しく、周辺地域も含め地域を大きく捉えて効率的な資源配分を行うというのは正しい考え方である。これにより、無駄な投資や医師の生産性が向上することは言うまでもないであろう。
しかしながら、忘れてはならないことは、これらは「延命措置」に過ぎないということである。統合しても、いずれまた人口が減り患者が減れば更に広域で統合するということに成り兼ねないか。これに対する根本的な解決策が議論されることはあまり無いように思える。少しこの根本的な解決策に関して考えてみたい。
まず考えられるのは、病院に目を向けるのではなく、そもそも地域を活性化することが第一であるということではないか。詳しい調査を行ったことはないが、人口が減り患者が減るような地域は、他の分野でも同様なことが起こっているはずだ。つまり人口減が生み出す経済の悪循環に直面している。病院経営の問題など単なる一つの側面の議論でしかない。地方の議会で地方議員が自治体病院の赤字に関して病院長などを追求している姿は、傍から見るとおかしい。病院経営云々の前に、そもそも議員として地域を活性化せよと言いたい。地域が活性化し、住みたい人が増えれば、医師も集まるし、患者も増え、病院経営は良くなるはずである。
次に重要な視点は「距離の概念を無くす」ことではないか。病院は患者の近くになくてはならないという既成概念をどこまで捨てられるかである。病院は消費立地が必要である産業であると言われる。実は一昔前は小売業もそうであった。しかしながら今やネットで何でも手に入る時代になったからこの消費立地という概念は適さない。5Gの世界、AIが活躍する時代が来ている。大きく捉えれば、病院が患者の近くに無くても良い方向に向かっていることは確かである。
「延命措置」から「根本治療」へ、日本の医療が問われているのは正にここであると思う。
遠山峰輝